2005年 10月 28日
「餃子のパリ」
あなたは思うだろう、なぜ餃子の「パリ」なのかと
だけど店主はそう思っていない。
なぜ餃子が「パリ」ではいけないのかと不思議なくらいだ。
店内に変ったところはとくにない。
メニューにもフランスを匂わせるものはなく、
店主がフランス料理店で修行を積んだという経歴もない。
「パリ」は賑わっている。
餃子の味が評判を呼んだものだ。
餃子の味は絶品だ。なによりもたれがおいしい。
すべて人間の味のするものばかりで、化学の味は一切しない。
始めての客の誰もが「パリ」を意識している。
だけど誰もそれを口に出せないでいる。
この店の名前は「パリ」なのにこの店の雰囲気は紛れもなく「ジャポン」で
「パリ」が入り込む隙がない。
常連客の何人かはその由来を知っているのだろうか。
店主は頑なに秘密を守っているのだろうか。
しかし、何人かは気付いているはずだ。
この店のトイレに貼ってある一枚のポストカードに。
ポストカードは他の雑多なチラシと同じにピンナップしてある。
エッフェル塔の写真はがきだ。
どうしても気になってしまい、宛名面を覗き見てしまった。
宛先はこの町の住所。
そこに一文だけ仏語で添えてあった。
「フランスより愛を込めて」ジョアンナ と。

by pyonjet | 2005-10-28 09:48 | [lunchtime column]


<< 溜息の船      ことばあそび >>